Preliminary Discussion:序論
この研究の2人の著者は、約20年前スタンフォード大学とノースウエスタン大学で陸上選手として張り合っており、今でもスポーツや体力づくりに活動的に動いています。Dr.Scott氏は、アスリートのパフォーマンスを最大にするためにはいかにすべきか、アスリートを支えるスポーツ心理学者として15年間働いており、またDr.Picker氏は、ホリスティック・栄養摂取アプローチを使用し、アスリートのパフォーマンスを最大レベルに到達させるアシストをしてきました。両者は、カリフォルニアのバークレーで共に研究実習を行っており、彼らの実習はエレクトロ・アキュスコープを使用したものが中心でした。エレクトロ・アキュスコープを使用して、頭痛やぜんそく、月経痛、慢性痛、腱炎、その他アスリートの様々なケガなどの問題に90%以上の割合で成功に導いてきました。この並外れた成功率にもかかわらず、マイオパルスの方がアスリートの筋力レベルを著しく増加させ得るということを多く耳にし、競争の激しいアスリートの業界で25年間深く関わりあってきた中で、マイオパルスによる10分の通電でDr.Scottが以前にケガをした左大腿四頭筋が著しく改善したことで、この研究実習に見合う様々なアスリートにマイオパルスを使用してみることにしました。
著者らが学生時代アスリートとして張り合っていた時、コーチやトレーナー、医師の間のコンセンサスは、当時アスリートの力のレベルは主に遺伝によって決定され、筋力の著しい改善がなされることはほとんどないということで一致していました。ウエイトトレーニングは当時、多くが筋肉の限界を作り上げるものとして難色を示され、スポーツにおけるパフォーマンスを改善するよりむしろ減少させると考えられていました。
今日、スポーツにおいて国家レベルや国際レベルで競争するためには、ウエイトトレーニングなしではほとんど不可能な状況です。また現在では、適切に組み立てられたウエイトトレーニング・プログラムが、筋力とスポーツのパフォーマンスを著しく改善することが広く受け入れられています。例えば、プロサッカーチームは、筋力の増加やパフォーマンスを改善させるためのウエイトトレーニング・プログラムを組み立てる仕事をする強化コーチがいます。
ウエイトトレーニングは、筋力を高めるための安全で、非侵襲性、薬の必要のないアプローチです。これらの特徴は、あらゆるトップレベルが競合するアスリートのトレーニング・システムの本来の役割として受け入れられ得る重要な理由となります。
スペシャルダイエットプログラムは、筋力の増加やパフォーマンス改善の手段として様々な状況に応じて奨励されていますが、今日においても未だ議論の渦中にあります。たとえば、高タンパク・ダイエットを主唱する医師やトレーナーの中には、そのようなダイエットの危険性を指摘する声もあります。
近年、スポーツ心理学者は、スポーツの世界で重要な役割となりつつあります。精神的姿勢がスポーツパフォーマンスにおける上昇のカギとして認識されてきていますが、最近では筋力の増加やパフォーマンスの改善を期待する特別なテクニックも開発されています。しかしながら、スポーツ心理学者の間では専門的意見の食い違いがまだ広く見られています。
マイオパルスのような微弱電流治療器を使用することで効果があれば、筋力を増加させ、パフォーマンスを改善させるという安全で、薬のいらない、非侵襲性のアプローチになり得る研究として大いに価値があると著者らは考えています。また、エレクトロ・アキュスコープは、アスリートのケガの通電による極めて効果的な器械であると証明されています。最近ではプロや大学チームのトレーニングルームでも使用され、多くの医師団、特にスポーツ医によって積極的に活用されています。
この研究は、微弱電流治療器マイオパルスがアスリートの筋力を増加させることを実験的に評価するために計画されました。筋力増加に効果的であれば、マイオパルスもまた、一般的なリハビリテーション器械と同じく、アスリートのケガからの回復を後押しする重要な役割をもつものと考えています。
マイオパルスは、生体の筋肉組織と電気的に“通信(会話)”をするよう設計されています。これは組織からの入力を受け、モニタリングし、修正された電気刺激を送信することで生じます。非常に独特な集積回路(特許済)と他の構成部品に蓄積された様々な平衡原理を通して効果が完成されます。器械は、実際の状態、あるいは接触した電極から入力された通電部位の軟部組織の状態をモニターします。
エレクトロ・アキュスコープ内部のマイクロ・プロセッサーは、電気的インパルスが脳や脊髄に送られると、筋肉の収縮組織へ蓄積されたフィードバックを評価します。マイオパルス内の独特なフィルタリングと増幅プロセスによって、収縮組織の電気的刺激電位は、メモリーに蓄積された標準平衡状態と比較され、その後マイオパルスはそれに応じて、自身の正弦波出力を調整します。従って、最適な範囲内で筋肉線維をモニターするパラメーターをもたらします。
30人の被験者(18~35歳の男性)がランダムに15人ずつの2つのグループに分けられ、一方はマイオパルスによって実際通電を受けたグループ(通電グループ)、もう一方は器械から出入力のないプラセボグループ(コントロールグループ)です。
彼らには、重さの決定や栄養の摂取を自由に行ってもらい、また共通に使用する器械に関しては、最低1時間、週3回、少なくとも3ヶ月使用するということを指示しました。参加するアスリートによって使用する運動器の多様性と、通電される様々な筋群により、本来共通のベースラインを確立させることが不可能でしたが、各自、自身のパフォーマンス能力を明らかに知っていますし、各々の練習を通して彼らのパフォーマンス能力を注意深く観察することにしました。
被験者には、最初3回の通電で、正規の練習メニューを続けながら練習がどのように感じられたか特に注意を払うよう指示しました。その後、その次の練習が終了し、その練習がどのように感じたかも評価しました。4回目の通電が開始したところで、被験者の中には、練習中に持ち上げるウエイトを増やしてみるという人もいました。各々の通電後、持ち上げられたポンドの量が記録され、個々の標準数値と比較されました。
まず、全ての被験者に同じ筋群を同じ方法で通電しました。被験者の手もしくは足にプレート大をおき、ローラープローブと共に器械本体に接続します。ローラープローブに電解液を塗布し、マイオパルスで600μA、0.5Hzに設定し、通電する筋群にゆっくりと動かしながら行いました。
通電中、電気的感覚は全く感じないので、実際の通電グループの被験者は、コントロールグループの被験者と同じような感覚(ローラープローブによる圧力)を感じるだけです。通電は2週間で、週に3回、1時間半行われました。実際の刺激を受ける被験者の通電設定は、全て0.5Hz、600μAが使用されました。
同じ手順でコントロールグループにも行われましたが、器械にはスイッチを入れないため刺激はありません。器械表面パネルは、被験者にも施術者にも見えないようにし、フィードバック音も聞こえないようにしました。
通電グループの15人の被験者全員は、練習の間、パフォーマンスの向上と同様、著しく筋力が増加したと報告しましたが、コントロールグループの被験者からは、筋力増加は最低限でパフォーマンスが増大した、あるいはそのどちらか一方と報告されました。これらの結果は、マイオパルスがアスリートの筋力を改善し得るということを示唆しています。
最初の通電後、実際に刺激を受けたグループの15人の被験者全員からは「非常に良かった。」「より強く感じた。」「とても調子がよい。」というようなコメントが寄せられました。通電グループの15人の被験者には、全6回の通電が行われました。これに対し、コントロールグループの被験者は、3人が「わずかに良い。」と感じたものの、誰一人として前述のような意見はありませんでした(コントロールグループの被験者の内2名は脱落)。
任意の口頭での反応と2つの評価表によって、マイオパルスは、本来の刺激を受けた被験者の筋力レベルを約15%増加させたということを立証しました。コントロールグループの被験者においては、約2%の筋力増加が報告されました。
我々(Dr. Scott氏とDr. Picker氏)は、今後も研究においてエレクトロ・アキュスコープ、マイオパルスを組み合わせて使用し、ペインマネジメントやリハビリテーションの症例の結果を観察していきます。また、今後の対象とされる臨床設定(Clinical Setting)による研究は、マイオパルスがアスリートの筋力を増加させるということを、さらに裏付けるものと思います。エレクトロ・アキュスコープ、マイオパルスの組み合わせによるウエイトトレーニングが、リハビリテーションやスポーツパフォーマンスの改善のための安全で効果的、かつ非侵襲性のアプローチであることに、我々は確信を持っています。
【参考資料】
An Informal Double-Blind Study to Evaluate Muscle Strength in Athletes Treated with the Myopulse
(impedance-Controlled Micro-Current Muscle Stim)
Study under the lead of Jack Scott, Ph.D., and Robert Picker, M.D.